2020年3月1日日曜日

あるサラリーマンの海外出張

タイ・バンコク、ファイクワン夜市の担当業務で一番面倒なのが、クリーン活動だ。
具体的には、自社のマスコットキャラクター、いわゆる、ゆるキャラに扮して、ゴミ拾い活動等をするのだが、当社の決裁書をモチーフにしたサイのキャラクター「けっサイ」の着ぐるみを、日本から運ぶのが大変だった。
決裁書の(印)を模した手のひら程のアクリル製の目玉を押しながら、ツノをその間に折り込む形でスーツケースに押し込み、あとの胴体、手足は要領を気にすることなく力任せに詰め込み、全てで、スーツケースは三つとなった。

入国カードの最後に、「B賞 お米4種食べ比べ」と書いてから、やっぱり心配になって、訂正二重線を引いたりしていると、あっという間にドンムアン空港に着いた。

現地に着いてから、真っ先に、私と同じ背丈で、なるべく金に飢えてそうな人物を探した。私の代わりに着ぐるみの中に入って、しっかりと清掃活動をしてもらうためだ。
もちろん経費は落ちず、ポケットマネーのため、なるべく安く済むよう人選した結果、私と髪質がそっくりな22歳の男性、ピムラパット・ウンパントーンを時給150バーツで採用した。スパコーン・パッタナワシンが携帯電話さえ持っていれば、彼女を採用したかったのだが。
ピムラパットは普段は王宮周辺でトゥクトゥクのドライバーをしていたが、ロッタリーで仕事を辞めるほどの大金を得て以来、暇を持て余しており、この日は二本目のロレックスでも買おうかとウロウロしているところだった。
私としては、そういう人物ではなく、生活費を得るための野心を必要としていたが、拙いタイ語で伝えることができたのは、「着ぐるみを着て、ゴミ拾い」が精一杯だった。
それでも彼のやる気は相当なもので、まるでこの仕事を以前にもやったことがあるかのようだった。

翌朝、ファイクワン駅前に現れたピムラパットは依然としてやる気に満ちていた。
しかし、着ぐるみを着てから5分と経たないうちに、暑さに耐えられずにすぐに「決サイ」の頭部を脱いでしまった。
私は、これはもう彼には無理だと思った。彼には無理をする理由がないからだ。
諦めて、私自身で着ぐるみを着ることにした。
暇なピムラパットには、清掃活動中の私の写真を撮り、インスタグラムに投稿してもらうという重要な役割を与えた。

私の勇姿を目にした会社のお偉いさんの「いいねぇ」が何個付いたかは、4月の辞令で明らかになることだろう。